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昨年開講された「チェンバロの匠が語る魅惑のバロック音楽」でゲスト講師としてお呼びした藤原先生の3回連続特別講座です。音楽関係の講座はカルチャーセンターにも数多くありますが、たいていは演奏技術を学ぶためのもの。クラシック音楽を入門編としてではなく、上級者に向けてたっぷり語る講座はカルチャーセンターとしては大変珍しいものです。しかし開講してみたら、ほぼ満席状態。約50人の受講者が本当に熱心に「情熱の音楽学者」藤原先生のことばに耳を傾けていました。
今回はバッハの教会音楽に絞った講座です。モーツァルト、ベートーヴェンほどの派手さはなくても、世にバッハ好きは多いのでしょう。私もバッハは好きで何枚かはCDも持っていますが、藤原先生のお話を聞くと自分がいかにバッハ自身のこともその時代のことも知らなかったか思い知りました。講座の資料として皆さんの手に渡った楽譜も、どう読んでいいのかさっぱりわかりません。「では実際に聴いてみましょう」と先生がCDをかけられると、バッハ作曲のカンタータが厳かに流れ、うっとりと聴いていると、ある瞬間、教室全体にビシッと楽譜をめくる音が鳴り響きました。ちょっとしたカルチャーショックでした。
しかしクラシック音楽の専門家とか、専門知識がないと受講しても意味がないかというと、全然そんな心配は無用です。私のように、ただ単純にバッハの音楽が好き、聴いて心地よいという人ならきっと、藤原先生の伝えたいメッセージはストレートに胸に響き、感動することでしょう。
「バッハはたしかに天才です。その曲は理性と感性の両面から見事に、完璧につくられている。バッハの曲を本当に理解するためには、その編成、構成、音成、リズムなど、頭できちんと勉強しなければならないことがある。けれど、そうした知識は一度、知った上で忘れるべきなんです。よい演奏、よい鑑賞のためには、曲に没入し、バッハの心そのものを味わってください」
昔、有名な音楽コンクールで全国入賞するほどの実力を持つ友人が、実はクラシックなんて大嫌いで「プライベートな時間にバッハなんて絶対に聴きたくない」と発言し、とても痛ましく思いました。上手に演奏することも正しく楽譜が読めることも、もちろん大事なことですが、それらができなくてもバッハの音楽を聴くと心が癒される自分は幸せだと思います。藤原先生が語ることばもバッハの曲と同じように美しく、感動的でした。 (2006年8月 りん)
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