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岡井隆さんは現代歌壇を代表する有名な歌人です。
マスコミにもしばしば登場されるので、短歌に造詣が深くなくてもご存じの方は多いでしょう。
わたしは実を言うと岡井さんの歌はほとんど知らないのですが、雑誌で評論は読んだことがあり、
その簡潔明瞭にして美しい日本語にしびれました。
「文は人なり」と言いますが、実際は文章と人物のイメージが一致しない人も多いですね。
でも岡井隆さんの講座は文章の通りでした。
6月14日の講座では、今年5月逝去された歌人春日井建さんの歌を取り上げられました。
春日井さんもたいへん有名な歌人です。18才で鮮烈な歌壇デビューした時は三島由紀夫が
「現代の定家が現れた」と絶賛し序文を書いているそうです。
岡井さんは、歌の批評だけでなくいろいろな思い出も語られました。
春日井建さんの才をほんとうに認め、人間としても愛していたのだなぁと胸があつくなるお話でした。
ゆったりと、おだやかに、静かに、響きのある低音で語られます。時折ジョークも言われ、笑い声もわきますが、
どんな時もことばが簡潔明瞭で、ぴたっと決まる。話にむだなたるみがいっさいありません。
春日井さんは咽頭ガンだったため、最晩年の歌には病状について触れた辛いものもあるのですが、
最期にこんな歌を残されました。
獅子に会ふ 歓びは誰に 語るべき
ものにはあらず 夜は白み来ぬ
岡井さんはこの歌を「歴史に残る名歌」と評し、独特のゆったりした低音でこのようなことを言われました。
「建さんは最期にライオンに会ったんだねぇ。どこで会ったのか、そのライオンとは何だったのか、
それはわからないし、知る必要もない。『誰に語るべきものにはあらず』と言っているし。
でも誰に語る必要はないが、それは『歓び』だったんだねぇ。春日井建という歌人がその最期に『歓び』を
歌って旅立っていった。そういう歌です…」
一瞬、わたしにもそのライオンが見え(わたしに見えたのは幻ですが)歓びの波長で体がふるえ、
なんだか泣きそうになりました。素晴らしい講義でした。
(りん)
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